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ひと狩りいこうぜ! 『モンスターハンター』実写化映画 感想

待望の新作『モンスターハンターライズ』発売されましたね!私も早速楽しんできました!モンハン!



映画『モンスターハンター』をな!!


モンハン暦はP2Gに始まり、トライ、4、X、ワールドとプレイ済。新作は大体買ってクリアまで遊びますが、Gまではやらない程度の距離感でモンハンと付き合っている私が映画『モンスターハンター』を観てきましたよ。(ライズも遊びたい所なのですが時間が……)

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想像を絶さなくていいので、よく知っているモンハンの世界を映画で見せてくれればいいかな……

作戦行動中に砂漠で消息を絶った偵察小隊。その探索に当たっていたアルテミス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)率いる特殊部隊は、突然、激しい砂嵐に飲み込まれてしまう。砂嵐が去った後、彼らの眼前に現れたのは、未知なる世界の光景と…ありえないサイズの超巨大モンスター!! 近代兵器が通用しないモンスターの猛攻に、小隊は全滅寸前にまで追い込まれる。絶体絶命の危機を救ったのは、見慣れぬ装備を身にまとい、巨大な剣を携えた一人の男(トニー・ジャー)。彼はモンスターを狩るために戦う者=モンスターハンターであった。
アルテミス達はなぜ、モンスターが跋扈する世界にやって来たのか? 元の世界に戻る方法はあるのか? すべての真実を知るためには、次々襲来する巨大モンスター達を倒し、生き残るしかない。狩るのは人間か? モンスターか!? 究極のサバイバルがいま始まる!
映画『モンスターハンター』公式サイトより引用

monsterhunter-movie.jp


大人気の国民的ゲーム「モンスターハンター」*1を映画に落とし込むに当たり取られた手法は昨今お馴染み「異世界転移」。この悪目立ち気味な独自要素は吉と出るか凶と出るか。
まあポール・W・S・アンダーソン監督のミラ・ジョボビッチ主演映画な時点で、いつもの「俺の嫁かわいいだろ映画」というか、55点くらいを期待していたら55点が出てくる映画である気構えはしつつ映画館へ向かいましたが……

映画『モンスターハンター』の良かった点

モンスターが大迫力

本作最大の美点。
偏執的なまでの過敏さで物音に反応し、縄張りに侵入した外敵を猛進粉砕する黒角竜ディアブロス*2と、空中を雄大に飛び回り、強力な火炎で地上の獲物を焼き尽くす雄火竜リオレウス*3。本映画のメインモンスターとして抜擢されたお馴染みの二体は"乗り越えるべき障害"としていずれも強大に撮られており、申し分ありません。
とりわけ「モンスターには近代兵器が通用しない」描写が白眉。米軍がモンハン世界へ転移してくる本作ならではの、竜の剛強さを測る物差しとして存分に機能し、相対した際の絶望度を格段に引き上げる。機銃掃射をものともせず肉薄し、突進でジープを横転させ、手榴弾が至近距離で爆発しても僅かに怯む程度なディアブロスを目の当たりにすれば「こんな危ない奴等と戦っていたのかハンター……」と改めて実感できること請け合い。
更に映画では、ゲームではぼかされていた"死"の概念が剥き出しになっており、「ディアブロスに角で串刺しにされる」「リオレウスの火炎を浴びて炭化する」「産み付けられたネルスキュラの卵が孵り幼虫に腹を食い破られる」と、人間の定めた幼稚なCEROレーティングなど無縁と言わんばかりに、モンスターによって命が容易くすり潰されていきます。近代兵器で異世界無双どころか、歯が立たずボコボコにされる様はさながら逆なろう映画といった具合でしょうか。一般的に、原作モノ映画において過剰なゴア表現の付与は好まれない傾向にあるものの、モンハンは元よりリアルを志向したグラフィックかつ、獰猛な野生と渡り合っていく世界観のため残酷描写がよくマッチングし、モンスター相手に狩猟を行うことの凄烈さがより際立っています。これは素晴らしい独自采配。
モンスターの姿勢や挙動の再現度も素晴らしく、映画中でのアクションの流れに不自然無く、なめらかに原作のモーションを挟み込んでくるのには感嘆しました。リオレウスが例の急降下キック*4を繰り出したり、ディアブロスが尻尾をブンブン振ってはたいてくるだけでモンハンプレイヤーなら楽しめるハズ。

ちゃんとモンハンしている

モンスターハンターの映画として押さえておくべきポイントが、事前に見積っていたより遥かに多く達成されているのは嬉しい。「調合して回復薬を作る」「肉を焼く」「エリア移動で攻撃をやりすごす」「素材の剥ぎ取り」「乗り」「装備の更新」「クエスト前のネコ飯」といったおなじみの要素が、ゲームから実写への移行にあたりアレンジこそ施されてはいるものの、出来うる限り再現されているのは好感触。節々で「あっモンハンだ!!!!」と心が躍ります。
小型で比較的組しやすいネルスキュラをまず倒し、得た素材で弓に状態異常を付与し、敵の聴力を逆手に取ったトラップも仕込んでからディアブロスに挑む一連のシーケンスはまさに「モンスターハンター」でしょう。P2Gにて、友人と二人でティガレックスに挑むもどうしても勝てず、まずは防具を整えに行ったり、罠を始め使えるアイテムはなんでもかき集めて持ち込み、夜の11時から朝の7時位までかかってようやく撃破できた*5思い出がフラッシュバックしてきた……

トニー・ジャーがかわいい

トニー・ジャーがかわいい。大事なことなので繰り返しますがトニー・ジャーがかわいい。ミラ(この略称、モンハンだと紛らわしいですね)の命の恩人であり、モンハン世界で生き抜く為の手練手管を伝授してくれる教導者であり、一緒にモンスターと戦っていく相棒でもある現地人ハンターという役柄なのですが、これがまた爽やかでお茶目で頼れ、映画全体を明るくする陽性の魅力を備えたイイ男なんです……!
怪物さえ活き活きと描かれていれば及第点の作品で、魅力的な人間キャラを見出せると得した気持ちになりますよね。というか、彼が居ないとこの映画へ抱く感情はもっと渋いものとなっていた筈。それ程にユーモアと癒しを映画全体に振り撒いているナイスガイなのです。本当にかわいい。トニー・ジャーが。
共同作業を通じて他プレイヤーとの間に育まれる連帯感。モンハンの醍醐味といえば何といってもコレであろう。言語が通じないト二ーの意をミラがどうにか汲み取りながら、ディアブロス撃破の共通目的へ向けて邁進する最中、だんだん打ち解けてきて心が通い合う様もまさに「モンスターハンター」。血路を拓く為、拙いカタコトながらディアブロスへの囮を買って出る男気には痺れました。トニー・ジャーがいるからこそ本映画は爽やかなバディムービー足りえた上に、モンハンの妙味も打ち出せているのです。

怒涛のクライマックス

そしてなんと言ってもクライマックスの15分。串カツの二度浸けは禁止だがリオレウスにそんなルールは通用せず、一度退けた筈のリオレウスが再び襲来してくるのですが、そのシチュエーションが怪獣映画とモンハン、その両方が好きな人間にとっては極上のマリアージュ!
ゲームのモンスターというフィクションが、突如現実の中に「非現実」として具現する瞬間。原作のモンハンがこの先も絶対に成し得ない映画ならではの展開であり、エポックかつエキサイティング。「これ!!!こういうのが観たかったんだよモンハン映画!!!!!!!!」と心から狂喜乱舞できる画を見事に提供してくれました。同監督が過去に撮ったゲーム原作映画『モータルコンバット』を想起させる、ランディングする気がまるで無い幕引きも最高。

このクライマックスが決め手となり、本映画に対してはかなり好印象です。良く楽しめ、笑顔で映画館を後にできました。

映画『モンスターハンター』のいまいちな点


ここまでざっと読まれた、まだモンハン映画未見の方は「お、かなりいい感じの実写化映画じゃん」との気持ちが醸成されているかと思います。自分としてもここで記事を閉じ、一人でも多く映画館へ足を運ばせ、映画「モンスターハンター2(ドス)」製作への栄養分にしてしまいたい、してしまいたい所ではありますが、本映画には良い面と同じくらい、看過しがたい悪い面も同居しており……

登場する武器種が少ない

武器の種別ごとに独自の操作方法が割り当てられているモンハンにおいて、武器はプレイスタイルに直結する超重要なファクターであり、プレイヤーは必ず、何れかの武器種に強い思い入れを抱くゲームデザインになっています。武器はモンハンにおける第二の主役と言っても言い過ぎではないでしょう。またその1つ1つが、素材となるモンスターの意匠を汲んだ入魂のデザインであり、シリーズを通して高い評価を得ている代物。武器のトレフィグ*6も発売されていた位に。
しかし本映画に登場するのは大剣・双剣・弓・操虫棍・スラッシュアックスのたった5種類。操虫棍は虫も飛ばないし、スラアクは変形もしません。お気に入りの武器種がどう活躍するのかを楽しみに本映画を観に来た人は、かなりの確率で悲しみを背負うことになります。私がモンハンで最も格好いい武器と信じて疑わず、毎回使用率トップのヘビィボウガンは陰も形もありません……せっかくモンハンの映画なので、大剣や弓のような他作でもありふれた武器よりは、独自色の強い可動機構を備えるガンランスやチャージアックスなどを重用して欲しかった。

モンハンへの拘りが今一歩足りない

「思ったよりモンハンしていた」のは先刻褒めた通り評価点ですが、「拘り抜かれている」とまで言える域には達しておらず、歯痒い。まこと歯痒い。
こちらを発見したディアブロスがつんざくような咆哮をあげる際、ミラとトニーの二人には棒立ちじゃなく、耳を押さえて踏ん張る"あの硬直ポーズ"をやって欲しいんだよ!!「リオレウスの隙は火を吐く直前」と教えて貰えるが、そこは火を吐いた後だろ!!!アイルーがコック長しかいないってなんだよもっと沢山出せ!!!!プーギーちゃん出せ!!!!!等々、「実写化映画は原作の完コピであれ」などといった狭量な目線を走らせずとも、純然たるディテールの甘さは否応なく目に付いてしまう。
文化風俗描写もモンハンの大きな魅力なのに、原作のモガやアステラのような、人で賑わっている拠点が無かったのは特に残念でした。アイテム栽培や釣りといったスローライフ要素も。『シン・エヴァンゲリオン』の村パート、こっちにください。

テンポが悪い

そして全体的に、冗長な場面の多い映画である。導入もトロい。一例を挙げると、トニーは昏倒しているミラを助け家まで運んでくれたんだからそこで協力関係成立でも良いのに、一旦わざわざ両者に殴り合いのケンカをさせ、尺を大きく食ってしまっている。
分かる。トニー・ジャーが出る以上、彼に格闘シーンを演じさせたくなるのは分かる。だが大前提としてこの映画を観に来る客は人間同士の肉弾戦を観たい訳ではない*7し、世の中全体を見渡しても『ゼイリブ』のプロレスシーンを連想し笑顔になれるような人間って、そんなに多くはないですよ!?
絆を深める過程を描くなら拳による人間同士の殴り合いではなく、ドス〇〇系やイャンクック辺りの手頃なモンスター退治をダイジェスト的に挟んでくれた方が嬉しい。初心者ハンターが自信をつけていく、ゲームの追体験にもなりますし。
リオレウス、ディアブロスの前座的位置付けの、小型モンスター・ネルスキュラに割かれた尺も不釣り合いに長い。モンハン4で印象深かったネルスキュラ*8の選出自体は良いのに、いかんせん長い。群体による恐怖はモンスター映画の常套句であるものの、どうしても『スターシップ・トゥルーパーズ』や『ガメラ2 レギオン襲来』などで既視の画になってしまい、モンハン映画の"ならでは"感に貢献していない。ネルスキュラが大群でワラワラ襲ってくるより、重要な局面で1匹のランゴスタが刺してくる方が遥かにモンハンらしいのだ。ネルスキュラの大群も決して嬉しくない訳ではないが、心霊番組における外国の悪魔祓いパート並に微妙である。の割にリオレウスはパッと出てきてラスボスに収まったりと、全体的に尺配分がおかしい。
本作は6000万ドルとかなりの低予算で製作されており(名探偵ピカチュウの予算は1億5000万ドル、参考までに)、ヘンな尺配分や冗長な場面は、恐らくそうでもしないと映画を保たせられなかったのではと推測。予算さえもう一声あれば、モンハンへの没入感を高めるCGや美術で映画全体をくまなく覆うこともできたのでしょうが……引きの画で荒野を歩く場面の多さが、雄弁に予算の少なさを物語っています。

「英雄の証」が流れない

致命傷。信じられない事に本映画は原作のメインテーマである『英雄の証』、及び代名詞にもなっている有名な肉焼きの曲*9の両方が流れません。本映画に好意的な自分でも、モンハンの映画としてこの二曲が流れないのはどう取り繕ってもダメです。良さげな場面で『英雄の証』さえ掛かれば一定の満足を得られた人はそれなりに多かっただろうに、どうして、どうして……
なお日本語吹替版で観れば、一応スタッフロール後の声優クレジットで『英雄の証』は流れるみたいです。流石にこの曲が流れないのはマズイと判断した日本語版製作スタッフのはからいでしょうか。

映画『モンスターハンター』総評

推したいのに推しきれないもどかしさ。
映画としての出来は世辞にも良くはないものの、B級モンスター映画が好きで、更にモンハンをプレイしたことがあれば満足度が下駄を掃き、基本50点から+5~15点くらいな感じ。あ、本当に55点くらいの映画が出てきた。

近年の国民的ゲーム原作映画と比較すると、元作品への敬意と野心的な独自解釈を見事な均衡で両立させ、人とポケモンが共に暮らす夢のような社会を観客の眼前に広げてみせた大傑作『名探偵ピカチュウ』には及びませんが、元作品がSFCのゲームなのにFC風フォントでノスタルジーを煽ろうとする志の低さを開始1分で見せつけられ、這いつくばるようにして探した良い点もオチが念入りに潰してくる『ドラゴンクエストユアストーリー』のような酷い映画でも決してありません。

リオレウスやディアブロスといった看板的人気モンスターの魅力を、乏しい予算でなんとか最大限引き出そうとする気概は十分感じられ、そして実際に、強大で雄大な捕食者としてしっかり撮られているのは大きな美点です。

ヘンな部分は沢山あるよ……ありますよ!!!むしろヘンな部分の方が多いよ!!!
「ダメ映画なんですね????」って真っ直ぐなまなざしで問い詰められでもしたら、さっと伏し目がちになっちゃうのはもう避けられない。

しかし、しかしである。ガトリング砲に手榴弾といった近代兵器なぞ歯牙にも掛けずディアブロスが猛進し、米軍の戦車やオスプレイをリオレウスが急襲していく、そんな怪獣特撮映画兼モンハンプレイヤーの白日夢を顕現せしめた映画を、嫌いになれる筈があろうか?愛すべき実写化映画にして、滋味深いB級モンスター映画が、またひとつこの世界に産み落とされたのだ。

『ライズ』を一端脇に置いて、映画『モンスターハンター』、観に行ってみませんか?

*1:今や押しも押されもせぬ国民的ゲームですが、モンハンが爆発的に広まったのは持ち寄って気軽にプレイできるPSPのシリーズからであり、ネット接続の敷居が高めだったPS2の初代や2はそうでもありませんでした。

*2:悪魔的な見た目から繰り出される体当たりが強烈な砂漠のモンスター。地中に潜ったら音爆弾を投げるのが定番の攻略法です。本映画に出るのは亜種。

*3:モンハンといえばこいつな象徴的モンスター。空の王者。よく卵を盗まれる。リオレイアという嫁さんがいる。

*4:解毒薬忘れててよく死ぬやつ。

*5:あんまりにもティガレックスに勝てないもんだから、当時最寄りの電気街にあった「メイドさんとモンハンができるカフェ」に行って倒してもらう案まで出ていた。

*6:『狩猟道具収集生活』、懐かしいですね。

*7:『ゴジラ ファイナルウォーズ』を観に来た客も、松岡昌弘と北村一輝のバトルが見たかった訳ではない。

*8:居そうで居なかった蜘蛛型モンスター。防具のデザインが永野護チックでコアな人気があります。

*9:上手に焼けました~♪